トー横。
東京・歌舞伎町にある「新宿東宝ビル」の傍にある、ゴジラに見下ろされた広場。
数年前までは旧コマ劇場前広場として観光客やスカウト、大酒飲みが闊歩していたのこあたりはシネシティ広場と名を変え、一部の若者の間では「トー横」と呼ばれている。
アジア一の繁華街と名を馳せた歌舞伎町は、夜の闇を再び利用し青少年を飲み込もうとしている。
トー横とは?
歌舞伎町一番街を抜け、新宿交番の手前。
かつては世界の五本の指に入ると称された歓楽街のど真ん中。
立ち並ぶビルとやや下卑た看板が並ぶ通りを歩いていると、ビルのない空白がある。
二重の手すりで遮られたその広場の名前は、
地雷メイクの少女たちからは「トー横」と呼ばれている。
元々、twitterで「#トー横」「#トー横界隈と繋がりたい」
などのハッシュタグでオフ会をする待ち合わせ場所がこの呼ばれ方の始まり。
トー横はかつての渋谷センター街のように、10代の溜まり場として昼夜問わず多くの若者が集まっている。
ある少女は学校に疲れたから。
ある少女は、自分と同じような地雷ファッション(フリルなどがついた黒、白、ピンクを基調とした毒がありそうなファッション)をしている女の子とリアルで繋がりたいから。
また、ある少年はDVを受け家にいたくなかったから。
多くの事情を抱えた10代達は、寄り添うように歌舞伎町の一角にたむろし、
いわゆるチルな時間を過ごして、まったりと過ごしている。
彼らはお互いの悩み、苦しみを持ち寄り傷を癒し合うように寄り添っているのだ。
あまりに多くの若者がたむろし、花壇の縁石に座り続けるものだから、厄介払いをしたい大人達にトゲつきのシートを貼られたほどである。
なんにせよ、SNSなどのオンライン上でしか交流しづらい昨今、
若者たちが見つけた密接に関わり会える場所がトー横なのである。
かつてはホームレス家族や幼い少女が住む場所だった
新宿東宝ビルが建つ以前。
このあたりは「コマ劇場前」と呼ばれ、スカウトや酔いつぶれたサラリーマンだけでなく10人以上のホームレスが住んでいた。
彼らは近くの電気屋から頂いてきたと思われる背の低いダンボールを家代わりに並べ、中には夫婦が一緒に暮らす家庭すらあった。
また、歌舞伎町で路上生活をする少女「こころちゃん」の住処もこの旧コマ劇場前広場だった。
時代が違えども、人を惹きつける魅力がこのあたりに潜んでいるのかもしれない。
変わりゆく人となり。手軽さを求めて沼に浸ってゆく10代達
今日も「#トー横界隈と繋がりたい」というツイートが投稿されていた。
投稿文には「なんでもします」
と書き綴られている。
SNSでの軽い関係、見栄に縛られた関係を嫌った若者たちは
このトー横の親身な仲間に魅力を感じるのだという。
「なんでもします」その重い一言は、トー横の裏側を。
あの歌舞伎町の10代たちの闇を物語っていた。
インフルエンサーが児童ポルノ製造で逮捕
16歳の女子高生と性交し、その様子を盗撮したとして、警視庁少年育成課は、児童買春・ポルノ禁止法違反(児童ポルノ盗撮製造)などの疑いで、住居不定、無職の八重樫海渡(かいと)容疑者(21)を逮捕した。八重樫容疑者は「ストレス発散のためだった」と容疑を認めている。
同課によると、東京都新宿区歌舞伎町の複合施設「新宿東宝ビル」周辺は通称「トー横」と呼ばれ、集まる未成年らは「トー横キッズ」と呼ばれている。飲酒や市販薬の過量摂取などが横行しており、警視庁は見回りなどを強化している。
八重樫容疑者はSNSでトー横の様子を発信しており、トー横に興味を持っている女子高生と連絡を取り合い誘ったという。八重樫容疑者のスマートフォンには複数の児童ポルノが確認されており、同課は余罪などを含めて捜査を進めている。
逮捕容疑は、4月30日と5月31日、新宿区歌舞伎町のホテルなどで、16歳の女子高生と性交し、その様子を盗撮したとしている。
引用元:産経新聞
トー横の発信者であり、看板的存在の逮捕。
しかも児童ポルノ。
twitterで見たトー横希望の少女の「なんでもします」という言葉は
この逮捕劇の直後。もしかしたら現在進行形で脱いでもいいからトー横界隈の仲間に入りたいと願っているのかもしれない。
歌舞伎町浄化作戦で一掃されたはずの闇
2004年に石原慎太郎東京都知事(当時)によって開始された歌舞伎町浄化作戦。
違法な風俗店の摘発やヤクザの締め出し、スカウトやキャッチ行為の規制など、歌舞伎町の悪評を払拭するべく多くの対策が実行された。
危険ドラッグや麻薬、覚せい剤の温床としても悪名高かった歌舞伎町はこの浄化作戦により一旦は平穏な繁華街に戻ったかに見えた。
昼間の歌舞伎町一番街やさくら通りを歩く人の数も少なく、スカウトの数もかなり減った。風俗店の呼び込みも2,3店舗ほどとかなり落ち着いていた。
夜のもさほど賑わうこともなく、当時の歌舞伎町は浄化作戦でかなりさびれていったのだ。
しかし、歌舞伎町のネットカフェで10年近く働いていた私は、歌舞伎町を長年見続け、トー横の少女達を見ると恐るべき実態を思い出さずには入られない。
書き換えられた身分証
歌舞伎町のネットカフェの数店舗のマネージャーを兼任していた当時、
「インターネット端末利用営業の規制に関する条例」が施行された。
ネットでのテロ予告や殺害予告の足取りをつかむ。また未然に防ぐ為に作られた条例で、私のネットカフェでは会員証登録を身分証で済ませないと利用宿泊させることはできなかった。
平日の昼。夏休みも終わった秋だったと思う。
ショートカットで化粧もうまくできない未成年が数日泊まり込みたい。と店にやってきた。
身分証を見ると学生証で年齢は14歳。
未成年を保護者抜きで宿泊させることができなかったから断ると
少女は
「親に勘当されて帰る家がない。地方から上京してきた」
当打ち明けた。
当時、歌舞伎町は家出少年たちで溢れており、珍しくない話だった。
少女は何度か引き下がることなく頼み込んできたが、1時間ほどで店から出て行った。
数日後、少女は着飾った格好と派手なメイクでネットカフェに再び現れた。
坊主の中年男性と二人で手をつなぎ、デートをしているようだった。
会員証作成のために彼女は身分証を差し出すと、
生年月日が変わり、彼女は21歳になっていた。
「店員さん。歌舞伎町はこんなこともできるみたいね」
彼女には歌舞伎町に来て知り合った暴力団の男がいる。身分証の偽造を行ったのだ。
あの頃、歌舞伎町浄化作戦は終わりに近づいていた。
それでも起きていた未成年の夜の世界への身投げ。
未だに、あの歌舞伎町という町にはザワザワするような感触の闇が残っているとしたら、
トー横の少女たちはどうなってしまうのだろう。
そんな暗い心配事がリアルに起こってしまわないよう、大人たちは心とリアルの密接な関係ができる社会を作らなければならないのかもしれない。
ライター【スニッカー北村】
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